『動物を保護する』ということの責任と覚悟

『動物を保護する』ということの責任と覚悟

夜間救急の電話が鳴ります。「ノラ猫が車に轢かれている。どうしたらいいですか?」すぐに来て下さい!と言いたい気持ちを抑えて、私達は言わなければ、いけないことがあります。

交通事故のノラ猫

:

私は以前夜間の動物救急の看護師として勤務していました。
夜間の救急にいたとき、「ノラ猫が車に轢かれているがどうしたらいいですか?」という問い合わせの電話がよくかかってきました。
状態を聞き、すぐに診察が必要な状態です。

「すぐに来て下さい!」
と言いたい気持ちを抑えて、私達は言わなければならない事があります。

保護の責任

:

私達が言わなければならないこと、それは、
「診察の料金について」そして、「治療後のこと」です。
ある程度は診察料金を安くする病院もあります。でもやはり夜間は高額になります。

特に交通事故の場合、検査が必要です。
見た目元気そうでも後で容態が変わることもよくあるので、保護主さんと相談しながらですが、レントゲン・血液検査・エコー検査などの検査を行い、治療に入ります。

ただ夜間に来る場合、見るに耐えない状態でやって来ることが多く、すぐに緊急処置に入ります。血管を確保し、必要なら気管挿管。そのままICUへ入院となります。

その場の治療費が払えても、元気になればその後のその子の生活をどうしていくのかが一番の問題です。

障害が残れば、今まで通りのノラの生活は送れません。介護が必要となります。
障害がなくても、その後猫をどうするかは保護主さんに委ねます。

夜間専門の動物病院なので、長期入院や引き取ることはできないので、今後の事は保護主さんにお願いしますと電話で伝えます。
連れていって「最後まで面倒みます」と言ってくれる人もたくさんいました。

でも・・・

ただ静かに電話を切る人も中にはいます。

:

とりあえず連れて行きますと言って連れてきたのはいいのですが、アパートだから飼えないとか、お金がないから、アレルギーがあるから無理と受付で言われたりすることもありました。

「せっかく保護してあげたのにお前らは何もしないのか!見殺しにしろってことか!」と電話で怒鳴る人もいました。

私達も助けたい。見殺しになんて出来ないし、したくない!
そのためにこの仕事をしています。助かる命があるなら必死で治療しますし、元気になるよう精一杯看護します。

でも元気になった後この子はどうしますか?

もし障害が残ったらどうしますか?

きつい言い方かもしれませんが、中途半端な気持ちは動物は不幸にします。

連れてきてやっぱり飼えないとなり、安楽死した猫もいました。

もしかしたら本気で保護してくれる人がいたのに、その機会を奪っていることに気がついてほしかったです。

「見殺しにするのか!」

この言葉は本当にきつかったです。

私も保護した猫を飼っています。

車にひかれ、骨盤が折れた状態で数日うずくまっていました。保護した時は、傷口から菌が入り敗血症になりかけていました。
手術は合計3回。ほぼ1ヶ月入院しました。今はその時の事が嘘のように元気になりました。
今は私の大切な家族です。

命は重く、そして命は続きます。

保護して終わりではありません。
むしろその後のほうが大変です。

事故の子を見つけてくれたことは、猫にとっては命を繋ぐための第一歩です。
見つけてくれたことに心から感謝しています。

ただ、それだけでは終わりません。

確かに、病院で預かってくれるところもあります。私が初めて勤めた病院も最初はそうでした。
ただ猫が増えすぎ、スタッフの負担を考え、院長は預からない事を決めました。
愛護団体も数多くありますが、電話すれば保護してくれるとは限りません。

お願い

:

保護すると決めた時は、その命を最後まで見届ける覚悟でいてほしいです。
1番悪いのは飼えなくなって捨てたり、避妊・去勢を怠りノラ猫を増やしてしまった無責任な飼い主です。
自分の考えが正しいとは思ってはいませんが、ただ動物に携わる仕事をする者としてのお願いだと思ってほしいです。
動物病院で働くスタッフは、
「助けたいけど、どうする事も出来ない。」
この解決しない問題と闘っています。

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