猫アレルギーの症状や対策と検査方法

猫アレルギーの症状や対策と検査方法

猫アレルギーを持っている人からすると、可愛い猫が近くにいるだけでアレルギー症状が出てしまい、とても辛いですよね。一体、なぜ猫アレルギーが出てしまうのでしょう?猫アレルギーを治す治療法はないのでしょうか?そんな疑問を解決していきます!

SupervisorImage

記事の監修

東京農工大学農学部獣医学科卒業。その後、動物病院にて勤務。動物に囲まれて暮らしたい、という想いから獣医師になり、その想い通りに現在まで、5頭の犬、7匹の猫、10匹のフェレットの他、ハムスター、カメ、デグー、水生動物たちと暮らしてきました。動物を正しく飼って、動物も人もハッピーになるための力になりたいと思っています。そのために、病気になる前や問題が起こる前に出来ることとして、犬の遺伝学、行動学、シェルターメディスンに特に興味を持って勉強しています。

猫アレルギーの症状

猫アレルギーが原因のくしゃみ

猫アレルギーの症状は花粉症や風邪の症状に良く似ています。目のかゆみ、鼻水、くしゃみ、のどの痛みや咳、皮膚にかゆみが出る事もあります。その他にも胸がひゅーひゅー言ったり、目の腫れ、胸の締め付け感なども・・・。猫に舐められるとその部分がかゆくなる、猫がいる家に入っただけで体調の変化を感じる、など猫との接触が軽度でもすぐに症状が出る人が多いようです。

猫アレルギーの原因

猫アレルギーのアレルゲン

猫アレルギーの原因は、「Fel d」と呼ばれている猫が産生する様々なタンパク質です。「Fel d1」から「Fel d8」の8種類のアレルゲンがこれまでに特定されていますが、「Fel d1」と「Fel d4」というタンパク質にアレルギー反応を示す人が特に多いようです。「Fel d1」は唾液や肛門腺、フケなどの中にありますが、主な産生場所は皮脂腺だそうです。「Fel d4」は、唾液に最も多く含まれているそうです。

猫の顔には多くの皮脂腺があるため、例えば猫の胸の皮膚よりも顔の皮膚に多くFel d1が存在するようです。毛に付着しているFel d1の量は、部位による差がないそうです。Fel d1もFel d4も猫の毛に付着していますので、猫を撫でるとそれらのアレルゲンが人間の手に付着します。またアレルゲンは空中に飛び散ります。

これらのアレルゲンは非常に小さいためとても飛び散りやすく、空気によって様々な場所へと運ばれるため、猫を飼っていない家庭でも検出される事があるようです。

猫アレルギーの検査方法

猫アレルギーの検査

猫を飼ったけれども家族にアレルギーが出て、泣く泣く手放した・・・という話は良くあります。実はそれが猫の殺処分にも繋がっている事も多くあるそうです。猫アレルギーはあまり軽視できない問題です。飼う前に最低限、猫と同居する予定の家族全員に猫アレルギーがないか確認をした方が良いでしょう。猫アレルギーがあるかないかの確認は、以下の方法で行えます。しかし、今現在猫アレルギーがなくても、また病院でアレルギー検査をして猫アレルギーがないと診断されても、将来もずっと猫アレルギーを発症しないとは限りません。猫に限らず動物を飼う前には、もし家族にアレルギーが出たらどうするか、一緒に暮らせないくらいアレルギーがひどくなったらどうするか、といったことまで家族全員でよく考えてから飼うくらいの心構えが必要だと思います。猫アレルギーの検査には、3つの方法があります。

猫カフェなどで接触してみる

近所の野良猫に接触してみるのも手ですが、野良猫は病気や寄生虫を持っている事がありますし、性格的にもあまり触れ合えないことが多いと思われますので、あまりオススメは出来ません。知人に猫を飼っている人がいれば、ちょっとお邪魔させて貰うのでも良いですし、家族全員で行くのは気が引ける・・・という方は、猫カフェに出向くのも良いでしょう。

猫アレルギーを持っている人の中には、この種類はダメ、この種類は大丈夫、この子なら大丈夫、などと種類や猫によって症状の有無、症状のひどさが違う人もいます。猫カフェには多くの種類、多くの猫がいますので、猫アレルギーがあるかないか知りたい場合には特定の猫しかいない猫飼いの一般宅よりも猫カフェで多くの猫と触れ合ってみる方が向いているでしょう。

病院での検査

内科や皮膚科、アレルギー科、耳鼻科などでアレルギーの検査を受ける事が出来ます。アレルギーの検査にはいくつかの種類があり、皮膚表面に小さな傷をつけそこから検査液をしみこませて皮膚の反応を見る「プリックテスト」が猫アレルギーに対しても少数の病院で行われているようですが、猫アレルギーの主な検査は血液検査のようです。少量の血を採取して、猫のフケに対する反応を測定する検査で、いくつかの測定法があるようです。

検査結果と、実際に猫との接触した時の反応とを合わせて猫アレルギーの有無を判断するのが良いでしょう。また、医師が必要と診断したアレルギー検査については保険適応がされますが、それ以外の場合は保険適応されない事があるようです。保険適応外の場合には検査項目数によっては費用が高額となる事もあります。保険適応の有無、検査費用については、事前に受診する病院に確認をとるようにしてくださいね。

市販の検査キット

薬局や通販サイトなどで、市販の検査キットを購入する事が出来ます。ご自身で指先から血液を採取して、検査機関に送ります。病院に行く時間がない方には手軽に出来て便利ですが、医師から詳しい説明を聞きたい方は、時間を取って病院で検査をした方が良いかもしれません。

費用は検査する項目数により異なりますが、6千円〜3万円程度です。口コミを見ていると、意外と採血に手間取る方が多いようです。失敗する事もあるようですので、ご心配な場合にはやはり病院での検査を受けた方が確実に検査は出来るでしょう。

猫アレルギーの対策

猫のブラッシング

猫アレルギーを起こさない対策として、1番有効なのは猫を飼わない、という事ですが猫好きな方には酷ですよね。次の方法を実践する事で、猫アレルギーの症状が緩和される可能性があります。

抜け毛対策を行う

定期的なブラッシングをして部屋に舞い散る抜け毛を減らす事で、アレルギー症状が軽くなる場合があります。100%とは言えませんが、抜け毛をなるべく出さない、溜めないことに越した事はありません。ブラッシングをして落ちる毛を少なくする、マメに掃除機をかける、服などについた毛を取り除く、といった対策を行いましょう。

室内環境を整える

猫と暮らす空間を整えると、アレルゲンとの接触を減らす事ができますので、それだけアレルギー症状も出にくくなるでしょう。

  • 猫を触った後は手洗いをする
  • 猫の立ち入り禁止場所を作る
  • HEPAフィルターを搭載していたり動物へのアレルギーに効果があることが示されている空気清浄機を使う
  • 枕、カーテン、シーツ、ぬいぐるみなどを定期的に洗う
  • カーペットではなく、フローリングにする(※猫に負担をかけないよう、滑り止め対策も行う)
  • 壁を拭く

などが挙げられます。いずれも猫の毛やフケなど、アレルゲンが付着しているものを排除する事が大切です。とは言え、せまい隙間に毛などが入り込む事があり、完全に排除するのは難しいでしょう。

それでも、何もしないよりかははるかに良いです。実際に家の中を清潔に保つことで、猫アレルギーを持つ家族がいても猫と一緒に暮らしている例もあるそうですので、是非実践してみてください!!

猫をシャンプーする

猫を週に1〜2回シャンプーすると、それだけアレルゲンの発生を防ぐ事は出来ます。ただ、シャンプー嫌いの猫も多く、頻繁に猫を洗う事は猫にとって負担となりかねません。愛猫がシャンプー好きならば実践してみても良い方法ですが、もしシャンプー嫌いの場合には、無理して行いたくないですね。

猫をシャンプーする効果についての補足

猫をシャンプーした場合、確実に猫の皮膚と毛についているFel d1も猫が生活している空間の空気中のFel d1も減ります。しかし、猫は常にFel d1を産生しているため、たったの2日でどちらのFel d1もシャンプー前の量に戻る、という研究結果があります。

この結果から、猫をシャンプーしても猫アレルギーの症状改善には効果がないと言う人もいますが、実際に猫をシャンプーすることで猫アレルギーの症状を抑えられている方もいるようです。毎日猫を洗わないと効果がない人から週に1回程度のシャンプーでも効果がある人がいるのでしょう。猫アレルギー対策として、猫の負担にならない範囲でシャンプーを試してみるのは良いと思います。

≪参考≫

Avner DB, Perzanowski MS, Platts-Mills TA, Woodfolk JA. Evaluation of different techniques for washing cats: quantitation of allergen removed from the cat and the effect on airborne Fel d 1. J Allergy Clin Immunol. 1997;100(3):307‐312.

Carayol N, Birnbaum J, Magnan A, et al. Fel d 1 production in the cat skin varies according to anatomical sites. Allergy. 2000;55(6):570‐573.

獣医師:木下明紀子

猫アレルギーの最新治療方法

猫アレルギーの治療

猫アレルギーを含め、アレルギーにはまだまだ不明なことも多くあります。ですから、現状では猫アレルギーを根本的に治す方法はなく、あくまでも投薬で症状を軽くする対症療法がメインになります。

しかし、治療に必要な抗原液を海外から輸入して「減感作療法」という治療を猫アレルギーに対して行っている病院も少数あるようです。減感作療法では、抗原液(アレルゲンを薄めた液体)を投与することで、過剰な免疫反応を起こさないように徐々に体を慣らしていきます。

猫アレルギーについての研究は数多く進められており、特にワクチンについて多く研究されています。将来的には猫アレルギーの人でも安心して猫と暮らせる治療法や予防法ができるかもしれません。

猫アレルギーの予防についての補足

猫アレルギーの人が症状を起こさないようにする様々な免疫療法(いわゆる「ワクチン」と呼ばれています)が研究されており、猫アレルギー患者に投与してアレルギー症状を予防するものから、猫に投与してFel d1の量を減らすものまで様々あります。

また、キャットフードに特別な処理をした卵黄を使用することで、そのフードを食べている猫が産生したFel d1がアレルギー症状を引き起こさないものにする、という研究も行われています。

その研究は世界的なペットフードメーカーであるピュリナが行ったもので、その研究結果を利用した「アレルゲンを減らすキャットフード」が「Pro Plan LiveClear」シリーズとして既にアメリカで発売されています。

公式HPによると、毎日このフードを猫に食べさせた結果、猫の毛とフケから検出されたアレルギーを引き起こすFel d1の量が3週間以内に平均で47%減ったそうです。口コミの多くもこのフードを高く評価しています。日本でもこのフードが発売されるのが楽しみですね。

≪アメリカのネスレピュリナ社 Pro Plan LiveClear のサイト≫

≪参考≫

Bonnet B, Messaoudi K, Jacomet F, et al. An update on molecular cat allergens: Fel d 1 and what else? Chapter 1: Fel d 1, the major cat allergen. Allergy Asthma Clin Immunol. 2018;14:14. Published 2018 Apr 10.

Thoms F, Jennings GT, Maudrich M, et al. Immunization of cats to induce neutralizing antibodies against Fel d 1, the major feline allergen in human subjects. J Allergy Clin Immunol. 2019;144(1):193‐203.

Satyaraj, E, Gardner, C, Fillipi, I, Cramer, K, Sherill, S. Reduction of active Fel d1 from cats using an antiFel d1 egg IgY antibody. null. 2019; 7: 68– 73.

獣医師:木下明紀子

猫アレルギーが出にくい猫種

サイベリアン

ロシア土着の猫に起源を持つサイベリアンはアレルゲンの1つである「Fel d1」の分泌が少ない猫、と言われています。これについては研究結果が出ており、確かにサイベリアンのうち、半数は「Fel d1」が少なかった事が報告されています。また、そのうち約15%のサイベリアンではFel d1の量が非常に少なかったそうです。

実際に猫アレルギーを持つ家族がいて、サイベリアンを飼った所アレルギー症状が出ない、または軽微だった、という方もいるようですが、「Fel d1」の分泌量が少ないサイベリアンと出会えるのは2分の1の確率だと考えられるわけです。
ただ、これはアメリカのサイベリアンのデータなので、日本にいるサイベリアンの血統では、また違う結果が出る可能性もありますので注意が必要でしょう。

サイベリアン以外にも、コーニッシュレックスやオリエンタルショートヘア、バリニーズやスフィンクス、デボンレックス、ベンガルなども猫アレルギーを起こしにくい、というデータがあるようです。薄い毛色よりも濃い毛色の方がアレルギー症状を起こしづらい、とも言われているようです。が、全くアレルゲンを持たない猫はいません。

アレルゲンを出さない猫を作出しよう、という動きもあったようですが、人間にとってはアレルゲンでも、猫にとっては大切な働きをしている成分である可能性もあり、人間の都合だけで猫を変えるのは良くないのかもしれません。猫を変えるのではなく、人間側で出来るだけの対策をして猫アレルギーの発症を防いでいきたい所ですね。

サイベリアンについての補足

Siberian Researchというアメリカの団体がサイベリアンのFel d1量について調べ、ホームページに結果を掲載しています(http://www.siberianresearch.com/allergen-levels/)。その結果は上記の通りなのですが、論文として発表されていないため詳細は不明で、サイベリアンがFel d1産生量の少ないアレルギーを起こしにくい猫だ、と科学的に立証するには至っていません。

ただ、猫アレルギーを持っているけれども症状が出ることなくサイベリアンと暮らしている、という方も実際にはいらっしゃるようです。また、サイベリアンのFel d1の遺伝子に複数の変異を見つけたという報告もあり、それらの変異がFel d1の産生に影響を及ぼしているかは更なる研究が待たれるところです。ロシアンブルーもFel d1の産生量が少ないと言われていますが、サイベリアンと同様に科学的に認められたデータはありません。

≪参考≫

Sartore S, Landoni E, Maione S, et al. Polymorphism Analysis of Ch1 and Ch2 Genes in the Siberian Cat. Vet Sci. 2017;4(4):63. Published 2017 Dec 1.

獣医師:木下明紀子

まとめ

猫と子供

愛らしく、時にひょうきんな表情を見せてくれる猫。我が家は幸いにも猫アレルギーを持つ家族はいませんが、猫アレルギーが猫の殺処分の理由にもなっている現状を考えると、猫アレルギーに対する研究がより進む事を祈らずにはいられません。

愛すべき猫と、人間が楽しく健康に暮らせる未来の実現が、近い話でありますように!

こちらの記事も参考にしてください。

スポンサーリンク