化け猫に関する3つのトリビア

化け猫に関する3つのトリビア

日本において化け猫は有名ですが、化けると言えば真っ先にタヌキやキツネを連想される方も多いのではないでしょうか。しかし、我らが猫も忘れてはいけません!日本人は猫のミステリアスな佇まいから怪異を空想し、化け猫という存在を作り上げました。ここでは、なぜ猫は化け猫として語られることが多いのか、また江戸時代の化け猫と行燈や遊女との関係性についてなどをご紹介します。

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化け猫天国の日本

三毛猫

高知の鍛冶が媼(かじがばば)や鍋島の化け猫騒動など、日本には化け猫に関した昔話が数多く残っています。
化け猫とはその名の通り、化け物に変じた猫のことを意味します。歳を重ねた猫のしっぽが二股にわかれ妖怪化するといった猫又の話は有名ですよね。

化け猫の昔話にはさまざまなバリエーションがあります。しかし化け猫の行動には共通点も多く、人に取り憑く、人を祟る、人の言葉をしゃべりだす、飼い主の復讐をする、死人を操る、人に変化するといったエピソードが主なものとして挙げられます。

日本人は猫をペットとして可愛がる一方で、謎めいた猫を畏れて化け猫という物の怪を作り上げていたのですね。

①化け猫を連想した理由

陰から見る猫

猫のミステリアスなイメージから化け猫が生まれた

人々が猫から化け猫や猫又といった妖怪、物の怪を連想する理由としては次のようなものが挙げられます。

  • 目がキラリと光る、瞳孔が大きくなったり細くなったりする
  • 体の柔らかさから来る俊敏でしなやかな動作
  • 家の中を縦横無尽に動き回り、どんな所にでも侵入可能
  • 毛を逆立てて威嚇する
  • 夜に活動し、闇夜の中でも自由に動ける
  • 発情期の鳴き声が普段と違って不気味に聞こえる

たしかに、瞳孔が大きい時と細い時では思わず「別猫?」と思ってしまうほどに顔が違って見えることもありますよね。灯りを持たずに夜道を歩くことができなかった江戸時代の人からしてみると、どんなに暗い場所でも自由に跳んだり走ったりできる猫はそれだけでも不思議な存在だったと思われます。

家の中にいても、思いもよらない所から気配もなく猫がヌッと出てくると、かわいいわが子(?)ながらもギョッとすることがありませんか?

獲物を捕っても食べずに遊ぶ姿が残酷だとも

また、人に飼われ満足に餌をもらっている猫は、獲物を捕っても食べずにじゃれつくだけというコもいます。獲物を食べもせずにじゃれて遊ぶ姿が人間の目には残酷に映り、化け猫と同一視されたという説もあります。

筆者が小学生だった頃、我が家にはジョジョというオス猫がいました。下校途中に道端で俯き座っているジョジョの姿を見かけたので何をしているのだろうかと近付いてみると、そこには大きなネズミが!状況からジョジョが捕ってきてじゃれていたようです。生でネズミを見たのはその時が初めてで大変驚いたのですが、同時にジョジョがネズミを食べていないことに疑問がわきました。

今ほど猫に対する研究なども行われておらず知識が少なかった昔の人々には、これら猫のミステリアスな特徴が化け猫と結びついていったのですね。

②化け猫が行燈の油を舐める理由

舐める猫

化け猫と聞いて多くの人が抱くイメージは、夜な夜な行燈の油を「ピチャピチャ……」と舐める姿ではないでしょうか。

行燈の明かりにボーっと浮かび上がる猫のシルエットや不気味な音……これらから化け猫を想像することは容易だったことでしょう。
通常4足歩行の猫ですが油を舐める際には2本足で立つこともあり、そんないつもと異なる行動も化け猫を連想させる原因となったようです。

行燈には魚の油が使われていた

そもそもなぜ猫は行燈の油を舐めていたのでしょうか。江戸時代、一般庶民の家庭の行燈には安く手に入るイワシやサンマ、クジラなどの油が使われることが多く、猫が好んで舐めていたいう事情があります。ちなみにこれら魚類系の油は燃やすと魚臭さがひどく、煤(すす)だらけになったとか。

猫が油分補給のために油を舐めた

昔は今ほど食べ物にも種類がなく、もちろんキャットフードもありません。日本人の毎日の食事は野菜や穀物がメインでした。
それらの残り物を餌としてもらっていた猫は、どうしても油分やタンパク質が不足気味になります。それらを補おうと身近にあった行燈の油を舐めていたという理由もあります。

当時の猫たちは「もっと栄養のあるもの食べたいな……」と思いながら油を舐めていたのかもしれません。そんな切ない姿が化け猫として恐れられていたと思うと、ちょっとかわいそうな気がしますね。

③化け猫と遊郭の遊女との関係

白猫

江戸時代に創作されたキャラクターに「化猫遊女」があります。
昼間は美しい遊女が夜中になると化け猫へと変じるといったもので、多くの歌舞伎や黄表紙、洒落本に登場し大人気となりました。化猫遊女に限らず、遊郭で働いていた遊女と化け猫は様々な点で結び付けられていたようです。

化け猫と遊女の共通点

遊女は「寝子(ねこ)」とも呼ばれていました。これは遊女を蔑む時に使われる言葉で、良い意味ではありません。
しかし人々はしばしば、遊女の存在に化け猫の姿を見出していました。それは次のような理由からだと言われています。

  • 猫も遊女も主な活動時間は夜
  • 遊郭では男女の愛憎劇や女性社会特有のドロドロした感情が生まれやすく、それが化け猫怪異譚の元となった
  • 遊女が演奏する三味線には猫の皮が使われている
  • プライベートが謎に包まれた遊女の神秘性とミステリアスな化け猫のイメージが重なった
  • 実際に猫をペットとして飼っていた遊女が多かった

お客さんに見せる顔はほんの一面、本心も分からず私生活も謎に包まれた遊女の存在は、気まぐれで謎めいた猫と重なりますよね。
また、たしかに化け猫には恨みや嫉妬などの淀んだ感情がセットとなっていることが多いです。

顔が小さく目が大きいことやしなやかな動きなどからも、猫は女性に例えられることが多いような気がします。猫と女性を重ね合わせる感覚は江戸時代から変わっていないのですね。

まとめ

怒る猫

化け猫という存在はもちろん空想の産物ですが、そこには嫉妬、愛情、恨みといった生々しい人間の感情が息づいています。
もしかしたら人々はそういった重くて抱えきれない、目を背けたい感情を化け猫の姿を通して語ることで、自分の心の安定を保っていたのかもしれません……などと思うのは筆者の考えすぎでしょうか。

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