猫のワクチンの基礎知識と注意点

猫のワクチンの基礎知識と注意点

皆さんは、猫のワクチンがどんなものかご存知ですか?毎年、猫に受けさせる注射…という認識はあっても、詳細な情報について自信を持ってお答えできる方は意外と少ないかもしれません。重大な感染症を防いでくれる猫のワクチンについて正しい知識を持つことは、飼い主としての大切な義務です。この記事では、そんな猫のワクチンについて、知っておきたい正しい知識について解説していきます。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

猫のワクチンの種類と特徴

猫と注射器

ワクチンとは、1度感染すると2回目以降、感染をしても発症しないという免疫システムを利用した病気を防ぐ治療法のことです。これは、弱っている細菌やウイルス、又は死んだ細菌やウイルスなどの病原体を、猫などの体に接種することで人為的な感染を起こさせ、感染症に対する免疫力をあげ、病気を防ぎ、発症してしまっても重篤な症状になるのを防ぎます。

もちろん、安全性が確保されたものなので、人為的に感染させたからと言って病気が発症することは滅多にありません。また、ワクチンには、製造方法の違いにより、「生ワクチン」と「不活化ワクチン」にわけられます(これは猫ワクチンだけに限定されたことではありません)。生ワクチンでは、弱らせた病原を使用して猫の体に接種し、不活化ワクチンでは死んだ病原体を使用して猫の体に接種することになります。

生ワクチン

  • 投与する病原体の量は少なめだが、母親からもらう移行抗体の影響を受けやすい
  • 投与量が少なくて済み、副作用のリスクが低い
  • 投与した病原体により感染の可能性がでてくる
  • 免疫力が長期間にわたって維持される

不活化ワクチン

  • 接種したことによる感染が起こらない
  • 毎年の追加接種が必要となる
  • 副作用によるリスクがある

猫のワクチンが防げる病気の種類

注射される猫

猫のワクチンには単体と3種から7種までの混合ワクチンがあります。皆さんの猫ちゃんは、一度の接種で、何種類かの病気を防ぐことができる、混合ワクチンをされていると思います。その中には、猫が重症化すると危険性の高いもので、社会への影響が大きい感染症が含まれる、コアワクチンと、猫が居住する地域ごとに感染症の発生状況を考慮して接種するノンコアワクチンがあります。では、それぞれの対象となる病気と、ワクチンの種類についてみていきましょう。

猫のコアワクチン

  • 猫ウイルス性鼻気管炎 … 3種、5種、6種、7種
  • 猫汎白血球減少症 … 3種、5種、6種、7種
  • 猫カリシウイルス感染症 … 3種、5種、6種、7種

※数種類ある猫カリシウイルス感染症では、3種と5種ではそのうち1種類に、6種と7種ではそのうち3種類に対応しているようです。

猫のノンコアワクチン

  • 猫白血病ウイルス感染症 … 単種、5種、6種、7種
  • 猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ) … 単体 
  • クラミジア感染症 … 5種、7種

猫のワクチンを接種する時期と注意点

獣医師に抱っこされる猫

猫にワクチン接種を行うのはいつが最適なのはいつなのでしょうか?その時期と注意点についてまとめてみました。

猫のワクチン接種の時期

子猫に初めてのワクチンを行う時期は、基本的に、母猫の初乳に含まれる移行抗体の効果が下がり始める生後50日から75日のあいだです。その後、3~4週間ほど間隔をあけて2回目の追加接種を行います。これは、ブースター効果と呼ばれ、ワクチンを2回続けて打つことで数倍の抗体量を得るためです。

母猫の初乳を飲んでいない子猫のワクチン接種は、免疫力がとても低いため、初乳を飲んでいる子猫より早めに接種することを検討する必要があります。獣医師に相談の上、ワクチン接種の予定を立てるようにしましょう。

生後1年を過ぎた成猫は、年に1度必ずワクチン接種を受けるようにします。また、ワクチン接種は、病院によって3~7種までと種類が異なったり、接種回数が異なったりする場合があります。

これは、その地域で流行している感染症や、猫が暮らしている環境に合わせて獣医師が最適な混合ワクチンを選んでいるからです。接種回数に関しては、基本的に1歳未満の子猫は年に2回となりますが、免疫力を更に高めるために、獣医師によっては3回をすすめる場合があるからです。

猫のワクチン接種に関する注意点

(1)血液検査等で、既に感染している病原体が体の中にあると、その病原体を含むワクチンを接種することで発症する危険性があります。ワクチン接種前には体調のチェックを行い、下痢・嘔吐や気になる点があれば必ず血液検査などの検査を受け、感染症の有無を確認しワクチン接種可能かの確認をするようにしましょう。

(2)ワクチン接種は、体調が悪いときに接種すると副作用などのリスクがあがりますので、体調が良いときを選んで行うようにしましょう。

(3)可能性としては、大変低いものですがワクチン接種には、副作用を起こすリスクが伴います。なるべく午前中のうちに接種を行い、副作用が出た場合にも、午後に対応してもらえるように備えましょう。

(4)ワクチン接種後15分ほどは、稀ではありますが、アナフィラキシーショックという強いアレルギー反応が出ることがあります。万が一に備えて接種後しばらくは病院で待機させてもらうと良いでしょう。

(5)ワクチン接種をした当日、可能であれば接種から2~3日は、シャンプーや激しい運動など体に負担がかかることは避け、猫の体調に注意するようにしましょう。

まとめ

女性に抱っこされる猫

猫ワクチンの正しい知識について御紹介させていただきました。いかがでしたか?毎年、何げなく受けているワクチン接種ですが、ワクチン自体には複数の分類や、接種に最適な時期、そして注意点があることがわかりました。

猫ワクチンは、接種をしておけば絶対病気に感染しなというわけではありませんが、病気に感染することや症状が重篤になることを高確率で防いでくれるものです。御自宅の猫ちゃんの健康を守るため、是非定期的なワクチン接種を心掛けるようにしましょう。

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